“いごねり”とは古来より佐渡に伝わる郷土伝承食品。原料は“いご草”という海草で、日本海沿岸に多く生育し、ホンダワラ類の海草に絡みついて成長する。製造方法は収穫した“いご草”を丹念に洗い、鉄釜で練るようにかきまぜながらとろとろに煮る。熱いうちに布袋でこして薄い板に乗せ、ヘラで満遍なく伸ばし、涼しい部屋で冷まして固める。固まったものをくるくると筒状に巻いて完成。巻かない板状のタイプもある。麺状に切ったいごのりに甘口醤油をかけ、薬味としてネギとショウガを入れるのが一般的ないただき方。
「いごねり」は、石川県の能登地方や新潟県(本土と佐渡島)、山形県、秋田県、青森県、そして長野県北部など、広い範囲で食べられています。佐渡の伝統料理で、日本海で取れる「いご草」を使います。秋から冬にかけて、家庭でよく作られています。いご草は、日本海側でよく見られる大型海藻の一種で、昆布やホンダワラなどと同じ仲間です。佐渡では「いご」、新潟では「えご」と呼ばれます。
いご草を天日干しして乾燥させ、水加減を調整しながら煮て、よく練ります。その後、薄くのばして冷やし固め、しょうが醤油や酢味噌でいただきます。もちもちとした食感があり、磯の香りがほのかに感じられます。似たような食品は他の地域にもありますが、「いごねり」は九州の「おきゅうと文化」から北前船や漁船によって、博多から能登半島の輪島を経由して佐渡に伝わったと言われています。
いご草の収穫は7月中旬から8月上旬に行われ、その後乾燥させて、「いごねり」を作ります。昔は秋から冬にかけて家庭で作られ、主に冠婚葬祭の席で食べられていましたが、最近では製造業者が通年で生産するようになり、日常的に食べられるようになりました。
佐渡島と本土では食べ方が異なります。佐渡では、「いごねり」を板状に薄くのばし、ところてんのように細く切って食べるのが伝統的なスタイルです。ねぎやしょうがなどの薬味をのせ、甘口醤油や生姜醤油をかけていただきます。
一方、本土では、いご草を煮て漉し、熱いまま容器に入れて固め、板状に切って、ポン酢や酢味噌で食べるのが一般的です。好みに応じて小ねぎやショウガなどの薬味を乗せたり、和からしを添えることもあります。
最近では、黒蜜きなこを添えたスイーツ系のものや、バニラアイスを添えるなど、新しい食べ方も考案されています。相川の海士町(あままち)では、「いごねり」を細く切ってめんつゆをかけて食べる「海士町そば」という料理もあります。