「東のアンコウ、西のフグ」と云われるように、冬の代表的な味覚であるアンコウ。今では、すっかり高級魚の感のあるアンコウであるが、越後・日本海・奴奈川姫の里の人々にとってはいたって馴染みの深い大衆魚で、古くから冬の郷土料理として、家庭の食卓に並んでいた。新潟県の西端に位置する糸魚川市は東西日本文化の混在地域であり、さまざまな食文化が生活を彩る。北アルプスの2,000m級の山々が一気に深い海溝へとなだれ込む急峻な地形の海で、荒波が速度を緩めることなく沿岸部に押し寄せるこの海域は、豊かな漁場が広がる。冬の日本海の荒波に揉まれながら、あんこうはたくましく育つ。糸魚川は、絶好の漁場であることから、とれたてのアンコウが手に入りやすく、糸魚川のアンコウは身が締まり、味わいが深いと言われている。ここで水揚げされるあんこうは、「キアンコウ」で、その中でも10kgを超える大物は糸魚川産の10㎏以上のキアンコウのことを「糸魚川荒波あんこう」と呼ばれる。「七つ道具」と呼ばれる各部位はそれぞれに違う味わいがあり、捨てるところがないと言われる鮟鱇。海のフォアグラと呼ばれる濃厚な味わいのあん肝や、プリプリに引き締まったコラーゲンたっぷりの身、水袋(胃)、ぬの(卵巣)、えら、ひれ、皮などを味わうことができる。糸魚川では、あんこう鍋はもちろん、刺身や唐揚げ、肝を乗せた丼など、さまざまなあんこう料理を提供する名店がたくさんある。毎年1月から3月には、「糸魚川荒波あんこうフェア」が開催され、旅館や飲食店が参加し、刺身や唐揚げ、あん肝など、あんこう料理を存分に楽しめる。
旬 12月 1月 2月